Useful Information建物管理お役立ち情報
マンション管理組合お役立ち情報 第1回
マンション管理
2025年12月26日
日々の管理運営に役立つポイントや、知っておくと安心できることを、4回に亘ってお話ししていきます。
第1回 「管理会社の仕事」
理事会では毎月、管理会社からの報告や各種の提案・見積りなどを受け取られていると思いますが、実際のところ「管理会社はどのような仕事をしているのか」「日々どのような管理が行われているのか」を体系的に知る機会は少ないかもしれません。今回は、管理会社の主な業務内容とその背景にある考え方を整理し、理事会と管理会社の連携をより円滑にするための一助としてご紹介いたします。
1.管理会社の業務区分と目的
管理会社の業務は、一般に以下のように大きく5つに分類されます。
1)事務管理業務
理事会・総会の開催支援、議案書や議事録の作成、通知文書の発送、契約書・図面等の管理、各種届出など、管理組合の「事務局的役割」を担います。法令や管理規約に基づく形式的手続きが多く、正確さと記録性が求められます。
2)会計管理業務
毎月の会計処理、出納管理、滞納者への督促、月次報告書・決算書の作成などを行います。特に管理費・修繕積立金の資金管理は、組合財務の根幹を支える重要業務です。最近ではオンライン口座連携や電子帳簿保存など、効率化も進んでいます。
3)建物・設備管理業務
共用部分の点検・清掃・修繕等を通じ、建物の安全性・快適性を維持します。電気設備・給排水・消防・エレベーターなど、専門的な法定点検の実施や報告書の保管も管理会社の責任範囲です。これらの業務を怠ると、法令違反や安全トラブルにつながるおそれがあります。
4)清掃・管理員業務
日々の清掃や巡回、住民対応を担う管理員は、現場の第一線に立つ「マンションの顔」です。管理会社は清掃品質の点検や管理員教育を通じて、現場のサービスレベルを維持しています。
5)緊急・トラブル対応
設備故障や漏水、停電などの緊急時には、24時間体制で受付・初期対応を行います。迅速な判断と報告が求められるため、コールセンターや専門業者との連携体制を整備しています。
これらの業務はすべて、「建物の安全」「資産価値の維持」「居住者の安心・快適な生活環境」の3つの目的に基づいて実施されています。管理会社は、理事会や総会を通じて組合方針を確認しながら、日常の管理運営を具体的に支えているのです。
2.「見えにくい 仕事」の重要性
管理会社の業務の多くは、居住者や理事会からは見えにくい部分にあります。
たとえば、日々の帳簿照合・請求チェック・点検報告書の整理・法定点検の期日管理・保険の更新など、表には出ない「管理の裏方業務」が多数存在します。これらを確実に行うことこそ、トラブルの未然防止と信頼性の維持につながります。
理事会から「特に問題はない」と感じられる月こそ、実は管理が機能している証拠です。
大きな問題が起きていないということは、日常の確認・点検・報告が着実に実行されている
からにほかなりません。
3.理事会との連携が成果を左右する
マンション管理は、管理会社だけでは完結しません。理事会の意思決定と承認を経て、初めて具体的な業務が動き出します。そのため、管理会社としては「理事会が判断しやすい資料」「比較しやすい見積り」「理解しやすい説明」を心がけることが重要です。
一方で、理事会におかれても、報告書や提案書を「単なる書類」としてではなく、「将来の建物運営を左右する情報」として目を通していただけると、より建設的な議論につながります。
理事会と管理会社は、「指示・受託」の関係ではなく、「管理品質を共に作り上げるパートナー」です。互いの役割を明確にしながら、情報を共有し、改善点をオープンに話し合える関係が理想です。
4.これからの管理会社の役割
近年、マンション管理を取り巻く環境は大きく変化しています。
少子高齢化に伴う居住者構成の変化、修繕費高騰、理事会役員のなり手不足、デジタル化の波。これらはすべて、管理運営のあり方に影響を与えています。
管理会社は、こうした時代の変化に対応し、単なる「委託業務の遂行者」ではなく、「組合運営の支援者」「資産価値の維持管理コンサルタント」としての役割を担うことが求められています。
具体的には、次のような取組みが進みつつあります。
・ITを活用したオンライン理事会や電子承認の支援
・長期修繕計画の見直しや資金シミュレーションの提案
・高齢化対応(見守り・福祉連携)などの新サービスの導入検討
理事会の皆様と管理会社が、将来を見据えた管理運営を共に設計していくことで、マンションの資産価値と居住満足度をともに高めていけると考えております。
5.おわりに
私たち管理会社は、理事会・組合員の皆様の「安心で快適な暮らし」を支える黒子的存在です。日常の業務は地味で見えにくいものが多いですが、その一つひとつが建物の安全性・快適性を守っています。
理事会の皆様には、日々の報告書や点検結果にぜひ目を通していただき、気づいた点や疑問は管理会社に確認してください。情報共有と率直なご意見のやり取りこそが、良好な管理の基盤になります。