マンション管理組合お役立ち情報 第3回

マンション管理

2026年1月23日

第3回 「防災と共助」

 地震・豪雨・台風など、近年の自然災害は全国各地で頻発しています。マンションも例外ではなく、停電・断水・エレベーター停止など、災害時に共用設備が使えなくなる事態は容易に起こり得ます。

 そのようなとき、私たちは「誰が、何を、どのように行動するか」を平時から備えておく必要があります。防災は、個人の備えだけでは十分ではありません。マンションでは「管理組合単位」での体制づくり、すなわち“共助”の仕組みこそが、被害を最小限に抑える鍵となります。

1.管理組合の防災責任と基本的な考え方

 マンションの防災は、建物の安全確保と居住者の生命を守ることが目的です。区分所有法や標準管理規約では、防災に関する明確な義務は規定されていませんが、共用設備を管理する主体として、管理組合には「安全配慮義務」があると解されています。

 つまり、理事会は「建物・設備の防災性能を維持する」ことに加え、「災害発生時に適切に対応できる体制を整える」役割を担っています。

 防災対策は大きく以下の3段階に分けて考えると整理しやすくなります。

 1. 予防(備える):防災マニュアル整備、備蓄品確保、設備点検、訓練の実施など。

 2. 応急(守る):災害発生直後の初期対応、情報共有、安否確認、救出活動など。

 3. 復旧(立て直す):設備復旧、損害確認、保険請求、修繕対応など。

 この3つの段階を理事会としてどこまでカバーするかを明確にし、管理会社・住民・行政などとの連携を計画的に整理しておくことが重要です。

2.災害時対応マニュアルの整備

 まず確認すべきは、「災害時対応マニュアル」が整備されているかです。

多くのマンションでは、防火管理上の書類として簡単なマニュアルが作られていますが、内容が古く、最新の設備や管理体制に合っていない場合があります。

 理事会として見直す際は、以下のポイントを盛り込むと実用的です。

 ✔ 災害発生時の連絡体制(理事会・管理会社・消防・警察・業者など)

 ✔ 停電・断水・通信障害時の対応手順

 ✔ エレベーター閉じ込め・火災報知設備作動時の対応手順

 ✔ 管理員不在時の初期対応ルール

 ✔ 備蓄品・非常用資機材の保管場所と使用手順

 ✔ 要支援者(高齢者・障がい者)への支援体制

 こうした項目を、年1回程度理事会で確認・更新することで、常に現状に即したマニュアルを維持できます。

3.備蓄品と非常用設備の点検

 災害後72時間は外部支援が届かないことを前提に、3日間の自立運営を目標とする備蓄が推奨されています。

 最低限準備すべきものは以下の通りです。

 ✔ 飲料水(1人あたり3リットル×3日分)

 ✔ 保存食(簡易調理で食べられるもの)

 ✔ 簡易トイレ、携帯ライト、乾電池、カセットコンロ

 ✔ 救急用品、毛布、ラジオ、軍手など

 これらを管理組合として備えるか、各戸で備蓄するかを整理し、保管場所と数量を把握しておくことが大切です。

 また、非常照明・発電機・受水槽・排水ポンプなどの防災関連設備は、定期点検を怠ると災害時に作動しない恐れがあります。

 管理会社では、点検計画や更新時期の管理を通じて、理事会の防災体制を技術的にサポートしてくれます。

4.共助体制づくりと地域連携

 防災の要は「共助」です。

マンション内で顔見知りの関係をつくることが、いざという時に最も力を発揮します。

理事会としては、防災訓練やイベントを通じて住民の関心を高め、住民間のネットワークを築くことが効果的です。

 特に高齢化が進むマンションでは、「要支援者名簿の整備」や「安否確認の方法(掲示板・アプリ・インターホンなど)」を検討する価値があります。

 さらに、自治会や近隣町内会、行政(区防災課など)との情報連携も欠かせません。

避難所の位置、物資配布ルート、災害時の優先復旧エリアなど、外部との関係を把握しておくことで、マンション単独では得られない支援を受けやすくなります。

5.理事会が今できる第一歩

 防災対策というと「大がかりな準備」を想像しがちですが、まずは次の3つから始めるだけでも大きな効果があります。

1. マニュアルと連絡網の現状確認

 理事会・管理会社・業者などの連絡先を最新化し、掲示・共有する。

2. 備蓄品リストの更新

 使用期限切れがないか、数量が適正かをチェックする。

3. 防災訓練・避難経路確認の実施

 年1回の訓練は「参加率より継続性」が重要です。形だけでも続けることが防災意識を保ちます。

 理事会でこれらを毎年定例化するだけで、防災レベルは確実に向上します。

6.まとめ ― 防災は「特別なこと」ではなく「日常管理の一部」

 災害はいつ起こるかわかりません。しかし、平時の備えと体制が整っていれば、被害を最小限に抑え、早期復旧につなげることができます。

 防災は「もしもの時の特別対応」ではなく、「日常管理の延長線上」にある取り組みです。

管理会社としても、設備点検・マニュアル改訂・訓練支援などを通じて、理事会の防災力向上に協力してくれます。

 理事会の皆様には、「できる範囲で続ける」ことを意識していただき、無理なく継続できる防災体制を築いていただければと思います。

 次回は、シリーズ最終回として「理事会運営の工夫」をテーマにお届けします。