Useful Information建物管理お役立ち情報
マンション管理組合お役立ち情報 第2回
マンション管理
2026年1月9日
第2回 「管理費と修繕積立金」
今回は、管理組合の財務運営の根幹をなす「管理費」と「修繕積立金」について、その役割と今後の課題を改めて整理してみたいと思います。どちらも毎月支払う費用ですが、性格や目的は大きく異なります。両者を正しく理解することは、健全な組合運営の第一歩です。
1.管理費と修繕積立金の役割の違い
まず、「管理費」は、マンションの共用部分を維持し、日常の生活を快適に保つための経費です。管理員人件費、清掃費、電気・水道代、保険料、修繕費、管理会社への委託費など、日々の運営に必要な「流動的な支出」をまかないます。いわば、管理組合の“運転資金”です。
一方の「修繕積立金」は、将来の大規模修繕や設備更新に備える“貯蓄”です。屋上防水や外壁塗装、配管更新、エレベーターリニューアルなど、10年・20年単位で発生する大規模工事のために積み立てます。
この積立金は、区分所有者の財産を長期的に守るための「建物の生命保険」とも言える資金です。
管理費が「今を支えるお金」、修繕積立金が「将来を守るお金」と整理すると分かりやすいでしょう。どちらが欠けても、安定したマンション運営は成立しません。
2.なぜ修繕積立金の見直しが必要か
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、近年の建築資材や人件費の高騰、耐震補強やバリアフリー改修などの新しい需要により、従来の積立額では将来的に不足するケースが増えています。
例えば、竣工当初の積立額が「月100円/㎡」で設定されていたマンションでは、30年後に必要な修繕費用に対し、積立金が半分以下しか確保できない事例も少なくありません。これは、建築費の上昇や工事範囲の拡大によるものであり、「当時の想定が現状に追いつかない」という構造的な問題です。
こうした状況を踏まえ、多くの管理組合では、5年ごとの長期修繕計画見直し時に「積立金単価の改定(値上げ)」を検討するようになっています。
ただし、値上げは組合員の理解と合意が不可欠です。理事会としては、「なぜ今必要なのか」「将来どのくらい不足するのか」「今上げるとどう改善するのか」を、数字と根拠をもって説明する責任があります。
3.理事会としての確認ポイント
修繕積立金を適正に保つためには、以下の3点を定期的にチェックすることが重要です。
1)長期修繕計画書の最新版を把握する
10年以上前の計画のままでは、実勢価格との乖離が大きくなります。最新の単価や工事時期を反映した改訂が必要です。
2)積立金の将来収支をシミュレーションする
今の積立水準で30年後に資金が足りるかどうかを、グラフで視覚化すると理事会でも理解しやすくなります。管理会社では、積立金改定の試算や複数案の比較資料を作成してくれるので、相談してみましょう。
3)合意形成の手順を整理する
値上げはセンシティブな問題です。いきなり総会に上程するのではなく、理事会内での検討 → 住民説明会(アンケート等) → 総会決議という段階を踏むと、混乱を防げます。
4.管理費の見直しにも「バランス感覚」を
管理費についても、経費構成を見直すことで効率化できる場合があります。
たとえば、電気料金契約の見直しやLED化、清掃仕様の最適化、保険契約の見直しなど、無理のない範囲でのコスト削減が可能です。ただし、単に削減を目的化すると、サービス品質の低下や管理員負担の増大につながる恐れがありますので、注意が必要です。
重要なのは「削る部分」と「守る部分」を見極めることです。
共用部の安全や防犯、緊急対応体制など、居住者の安心に直結する部分は維持しなければなりません。一方、相見積りや仕様見直しによって合理化できる部分は、積極的に見直す余地があります。
理事会と管理会社が協議しながら「必要十分な管理水準」を見極めていくことが理想です。
5.資金管理の「見える化」が信頼を生む
理事会が信頼を得るためには、資金の流れを透明にすることが大切です。
会計報告書をただ形式的に配布するのではなく、「なぜこの支出が必要なのか」「何にどれだけ使ったのか」を分かりやすく説明することで、区分所有者の安心感が高まります。
管理会社としては、財務データを分かりやすく見える化し、理事会が説明責任を果たしやすい資料づくりをサポートしてくれます。
6.まとめ ― 財務の健全性が資産価値を支える―
管理組合の財務は、いわばマンションの“体力”です。
短期的なコストだけに目を向けず、10年・20年先を見据えて準備することが、結果的に資産価値の維持と安心な暮らしにつながります。
修繕積立金の見直しや管理費の調整は、決して「値上げ」や「節約」だけが目的ではありません。
目的は、持続可能な管理を実現することです。
理事会と管理会社が協力し、現状を正確に把握しながら、将来に向けた資金計画を定期的に更新していくことで、マンションは長く健全な状態を保つことができます。
私たち管理会社も、財務・技術・運営の面から総合的にサポートし、理事会の意思決定を支える“伴走者”として取り組んでいます。
次回は、「防災と共助」をテーマにお届けします。