観葉植物は「どこに置くか」で効果が変わる。

グリーンレンタル

2026年6月5日

オフィス緑化と知的生産性を考える新しい視点

オフィスに観葉植物を置くと、空間がやわらかくなり、気持ちが落ち着く。そうした印象を持つ人は多いだろう。ただし、実際にオフィスへ植物を導入する際に重要なのは、「植物を置くかどうか」だけではない。どこに置くか、どのように視界に入るかによって、働く人の感じ方や作業への影響は変わる可能性がある。伊藤孝紀・堀裕和・濱田紗希による論文※①「仮想空間における植物配置が情報処理の知的生産性に及ぼす影響」では、仮想オフィス空間を用いて、机置・床置・壁掛・天吊といった植物配置の違いが、情報処理作業や心理状態にどのような影響を与えるかが検討されている。

緑は多ければ多いほどよい、とは限らない

この研究でまず注目すべきなのが、緑視率という考え方である。緑視率とは、人の視界の中にどれくらい緑が見えているかを示す指標である。単に鉢の数を増やすのではなく、働く人の目にどの程度緑が入るかを見る点が実務的である。研究では、緑視率0.0%から15.0%までの仮想空間を作成し、印象評価を行った。その結果、空間の評価は大きく「心理的評価」と「植物量評価」に分けられた。心理的評価とは、「快適」「好き」「良い印象」といった、空間を心地よく感じるかどうかに関わる評価である。一方、植物量評価は、「緑が豊か」「にぎやか」といった、緑の多さに関わる評価である。興味深いのは、心理的評価が最も高かった緑視率が平均7.9%だったことだ。一方で、植物量評価が最も高かったのは平均13.8%であった。つまり、「緑がたくさんある」と感じる量と、「心地よい」と感じる量は一致しないのである。オフィス緑化では、つい「もっと植物を増やそう」と考えがちである。しかし、働く場所では、緑が多すぎると圧迫感や視覚的なにぎやかさにつながる場合もある。大切なのは、量を増やすことではなく、適度に見える緑を設計することである。

机置は身近で安心感があるが、作業の邪魔になることもある

次の実験では、緑視率7.9%前後を基準に、机置・床置・壁掛・天吊・植物なしの5つの空間で、四則演算作業が行われた。四則演算は、メール確認や入力作業のような、比較的単純で反復的な情報処理作業に近いものである。机置の植物は、作業者のすぐ近くにあるため、緑を身近に感じやすい配置である。研究でも、机置は「居心地の良さ」「作業のしやすさ」「集中のしやすさ」などの心理評価で比較的高い傾向を示した。デスクの上に小さな観葉植物があると、自分の作業空間に愛着がわいたり、少し気持ちがほぐれたりする。これは日常感覚としても理解しやすい結果である。ただし、机上植物には注意も必要である。植物がモニターや作業対象に近すぎると、視線が散り、情報処理のスピードに影響する可能性がある。この研究でも、机置は心理的には好ましい一方で、回答時間が長くなる傾向が示されている。デスクに植物を置く場合は、正面ではなく、視界の端に自然に入る位置が望ましい。小さめの鉢を選び、作業スペースや画面を邪魔しないように配置するとよい。

壁掛けは、快適性と作業性のバランスが取りやすい

実務で特に参考になるのが、壁掛配置である。壁掛は、「快適さ」「開放感」「落ち着き」「疲れにくさ」といった印象評価が高くなった。壁掛の良さは、植物が視界に入りながらも、手元や画面の作業を直接妨げにくい点である。デスク上に物を増やさず、空間全体に緑の印象を加えられるため、フリーアドレスや省スペース型のオフィスにも取り入れやすい方法である。たとえば、執務エリアの壁面、通路沿い、オンライン会議ブースの背景、ミーティングスペースの一角などに植物を配置すると、働く人の視界に自然な緑が入りやすくなる。作業の邪魔をせずに、空間の印象をやわらげる方法として、壁掛けや壁面緑化は有効な選択肢である。

天吊植物は、視線の位置に注意が必要である

天井から植物を吊るす配置は、おしゃれで印象的である。カフェやラウンジのような雰囲気をつくるには向いている。しかし、執務スペースでは注意が必要である。研究では、天吊の鉢が作業パネルを見る際に視界に入り、作業しにくさにつながった可能性が指摘されている。植物そのものが悪いのではなく、見るべき対象との位置関係が問題になる。モニター、ホワイトボード、作業パネルを見る視線上に鉢や葉が重なると、無意識に注意がそれてしまうことがある。天吊植物を使うなら、集中作業を行う席の正面や真上ではなく、休憩スペース、エントランス、ラウンジ、通路のアクセントとして配置する方が安心である。

植物は「休憩の場」でより活きる可能性がある

この論文で特に興味深いのは、植物は作業中の執務空間よりも、作業の合間に休息を行う空間に配置した方が効果を発揮する可能性がある、という示唆である。観葉植物は、集中作業の真正面に置く必要はない。むしろ、少し目を休めたいとき、立ち上がって気分転換したいとき、同僚と軽く話すときに視界に入る方が、心理的な快適性を得やすい場合がある。リフレッシュスペース、窓際の休憩席、給湯スペース、コピー機周辺、ラウンジなどは、植物の効果を活かしやすい場所である。働く人が自然に立ち寄る場所に緑があると、オフィス全体の印象もやわらぐ。

まずは「今ある植物の置き場所」を見直してみる

オフィス緑化というと、新しい植物をたくさん購入することを想像しがちである。しかし、最初にできることは、今ある植物の配置を見直すことである。その植物は、働く人の視界に自然に入っているか。モニターや作業スペースの邪魔になっていないか。休憩や気分転換のタイミングで目に入りやすい場所にあるか。緑の量は、心地よく感じられる範囲に収まっているか。観葉植物は、ただ置くだけの装飾ではない。配置を工夫することで、オフィスの快適性や働きやすさを支える環境要素になる。まずはデスク周り、壁面、休憩スペースを見渡してみることだ。植物を少し移動するだけでも、空間の印象は変わる。大切なのは、植物を増やすことではなく、働く人にとって心地よく見える場所に置くことである。

オフィス内に設置する観葉植物については、植物に対する基本的な情報と適切な栽培管理が求められます。レンタルグリーンの採用には、適切な栽培管理の経験と実績のある業者選びが大切です。オフィス環境改善に向けて、観葉植物の設置をお考えの方は、京葉ビルサービスのグリーンレンタル(※定期清掃契約のオプションサービス)について、是非お問合せください。(☏047-484-0949)

参考 ①www.jstage.jst.go.jp/article/aija/88/805/88_867/_pdf/-char/ja

「仮想空間における植物配置が情報処理の知的生産性に及ぼす影響」日本建築学会計画系論文集 2023年88巻805号 伊藤孝紀、堀裕和、濱田紗希