マンションによくあるトラブル①「管理費等の滞納者とのトラブル」

マンション管理

2026年8月24日

マンションは共同住宅であることから、戸建てとは異なり、特有のトラブルが発生することがあります。国土交通省が5年ごとに実施し公表しているマンション総合調査(平成25年度)によれば、過去1年間に発生したトラブルとして、

「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」が55.9%、

「建物の不具合に係るもの」が31.0%、

「費用負担に係るもの」が28.0%となっています。そして、

「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」としては生活音、違法駐車、ペット飼育が、

「建物の不具合に係るもの」としては水漏れと雨漏りが、

「費用負担に係るもの」としては管理費、修繕積立金、各種使用料などの滞納がそれぞれ多くなっています。

これらはマンションにおけるトラブルの典型例といえます。そんな中から、今回のコラムでは「管理費等の滞納者とのトラブル」ではどのような点に注意が必要かをみてみましょう。

【滞納者の親族に対する請求や、職場への連絡は禁物】

① 管理費等を滞納している事実は、滞納者のプライバシーに含まれます。

親族は、管理費等の滞納との関係では、全く無関係の第三者にすぎません。

住宅の賃貸借契約における連帯保証人などとは異なります。

したがって、このような無関係の第三者に対し、管理組合として管理費等を請求することは、原則として許されません。滞納者のプライバシーを侵害するものとして、管理組合や個々の役員が滞納者に対して損害賠償義務を負うリスクがあると考えます。

② 勤務先への連絡はさらに慎重にすべき

管理費等を滞納しているという事実は、その人の経済状態を推測させる情報です。

滞納者の社会的評価や職場での立場にも影響する可能性があります。

たとえ本人宛ての封書として「親展」とするなどの配慮をした場合でも、違法と判断さ

れる可能性を完全には排除できません。

マンション管理組合・管理会社の実務としては、次のように整理をしましょう。

・滞納者本人        請求してよい     原則はこちらが基本

・滞納者の親族    原則請求しない    親族というだけでは支払義務なし

・親族に滞納事実を伝える       原則避ける             プライバシー侵害のリスク

・親族に滞納者の所在だけ尋ねる    一定の場合は可能性あり    行方不明の場合など

・親族が自主的に支払うと申し出た場合        受領する余地はある

・滞納者が死亡した場合の相続人    相続関係を確認して請求可能                 相続人が法的義務

を負う可能性

・滞納者の勤務先                  原則連絡しない    プライバシー侵害のリスクが高い

「管理費を回収したい」というマンション管理組合側の事情だけで、第三者である親族や勤務先を回収手段として利用してはいけないという事を覚えておきましょう。

したがって、滞納が発生した場合には、

・本人への督促 → 内容証明等による請求 → 支払督促・訴訟等の法的手続 → 必要に応じ

て強制執行

というように、原則として滞納者本人に対する適法な回収手段を選択することが重要になります。

滞納者の氏名等を公表することは許されるか

管理費等の滞納者に対し、制裁として、居住者から、その氏名を公表すべきだという声が、あがることがよくありますが、理事会や総会での対応を考えてみましょう。

①滞納者の氏名を公表することは原則として避けるべき

管理組合が滞納者の氏名を公表する目的は、主として、滞納者に対する、その羞恥心等

を利用した心理的圧迫を通じて管理費等の支払いを促すことであると考えられます。

しかしながら、

管理費等を滞納してしまっているということは、滞納者の経済状態が芳しくないことを

意味する事象であり、一般的に、他人には知られたくないことであるといえ、そのため、

これを他人に知られたくないという利益は、プライバシーの一内容として法的保護に値

し、これを違法に侵害した場合には、不法行為(民法709条)が成立し、侵害者は滞納

者に対して損害賠償義務を負うと考えられます。

管理費等の滞納に対する対処は、訴訟や強制執行等の法的手続によるべきであって、村

八分的な側面を有する氏名の公表は、手段としての相当性を欠いていると考えられます。

②滞納問題は「制裁」ではなく法的手続で対応する

仮に管理規約に「滞納者の氏名を公表できる」という趣旨の規定があったとしても、あるいは総会で氏名公表を決議したとしても、それだけで適法になるわけではなく、氏名公表という手段そのものが、滞納問題への対応として相当性を欠くと考えられます。

滞納者に対する法的措置を総会・理事会で決議する場合には、「長期滞納者」の様な記載では、特定が出来ず不十分ですが、「○○号室区分所有者」という記載であれば、足りるとしています。

管理費等の滞納に対しては

督促

内容証明等による請求

支払督促

訴訟

強制執行

など、法的に認められた手続によって回収することが基本とされています。

つまり、必要な手続のために本人を特定することと、制裁目的で氏名を広く公表することは別問題として考える必要があります。

マンション管理の実務では、次のように整理をしましょう。

滞納者の氏名を掲示板に掲示         避けるべき

総会資料に滞納者の氏名を掲載        慎重な対応が必要

「○号室区分所有者」と記載         法的手続の特定には足りる

「長期滞納者」とだけ記載          特定として不十分

規約に氏名公表の規定がある         規約があっても適法とは限らない

総会で氏名公表を決議               決議があっても許されない可能性がある

滞納者への対応                  訴訟・強制執行等の法的手続を利用する

滞納者の経済状況の公表                プライバシー侵害に注意

管理費を滞納しているからといって、見せしめ・制裁目的で氏名を公表することは許されない。回収は法的手続によって行い、総会・理事会で情報を共有する場合も必要最小限の特定にとどめるべきとなります。

次回、マンションによくあるトラブル②「放置自転車」について考えていきます。